ささささの日記

日本海海戦より二百三高地派

「帰ってきたヒトラー」にみる演説力

最近「帰ってきたヒトラー」という映画を観たんですが、

私にとって非常に面白い、当たり映画でした。

ヒトラーが現代にタイムスリップして、

そっくりさんとしてコメディアンになってしまうという話です。

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この映画の最大のポイントは、そんなヒトラーが得意の「演説」を武器に、

コメディアンながらも現代のドイツ国民から支持を得ていくところです。

昔のヒトラー同様、発言自体は過激なのですが、あくまで”普通のドイツ国民”が、

「少々過激だけど、言ってることは正しいよ」とキレーに魅了されていくのです。

 

本映画ではそうした「ヒトラーが大衆を魅了した演説の構造」を、

現代の状況にあてはめた上で非常にうまく再現していました。

基本的には

①今の状況は、クソだ!ゴミだ!みんな貧しくて、みんな困っている!!!

②こんな状況になっているのは、コイツらのせいだ!

③コイツらを打ち倒さなければ、我々に未来はない!(拍手喝采

 

てな感じです。

特に①では、具体例をあげながらしつこく問題提起していきます。

「テレビはこんなにも薄型になった!技術の進歩は著しい。

 しかし中で映っているものといえばなんだ!?クズだ!ゴミだ!」

大衆がひそかに心で抱えている問題意識をドンズバで言っていく。

しかもしつこく捉えていく。そうやって共感させて、味方につけていきます。

③もポイントです。たとえテレビであっても、聴衆がいる場で演説し、

観客の拍手なども含めて放映する。自分が他者から支持されていることを

あえて見せつけるのです。あとは身振り手振りや、発言に強弱を思い切りつけて、

印象的に表現していくところも特徴です。

 

 

ヒトラーは近現代における歴史上最悪の人物とされており、

私自身もそう思います。でも演説はすごい。

独裁権力を掌握するまでには、こうした能力の発揮があって、

本当に、実にストレートに、普通の国民を魅了してきた経緯があるというのは

忘れてはならない、と映画を観て改めて思わされてしまいました。

 

観る前はそんなに期待していなかったんですが、 

コメディ映画として、ちょこちょこ笑いもあり、学びもあり、とても良い映画でした。